湯河原と熱海で水彩画を教えるかたわら、ロードバイクに乗ってスケッチに出かけることも多い水彩画家の井上秋子。
繊細で美しいペンの線を生かしたスケッチに、爽やかな水彩絵具の色どりを乗せ、風を感じる風景画を生み出します。
ここでは旅する気分で見た湯河原の風景の数々をご紹介します。
より多くの作品をご覧になりたい方は画家のホームページにアクセスしてみてください。atelierorange.jp

湯河原の町は相模湾に面して扇形に広がっています。山間部は広大で、お隣の真鶴町や熱海市だけでなく、箱根町や小田原市と接している部分もあります。
スケッチで訪れたのは、駅や役場、スーパーなどがあり多くの人が暮らす「タウンエリア」、古くから温泉旅館が立ち並ぶ「温泉エリア」、港や海水浴場のある「海辺エリア」、そして幕山など伊豆の島々を見下ろす小高い丘の「山エリア」です。

特急「伊豆の踊子」が停車するJR湯河原駅。東京から小田原を過ぎると左側に海が広がり、旅に出たワクワク感で心躍ります。旅行鞄を下げた家族連れやカップル、ハイキング姿のグループが湯河原駅で降り立つと、まずは手湯で温泉を楽しみます。これからどんな1日が待っているのでしょう――

日当たりの良い湯河原では季節ごとにさまざまな花が咲き、訪れる人を飽きさせません。空に手が届きそうな吉浜の高台に咲き乱れるさつきの花。遠くに見える伊豆の島々を眺めながら、明日も晴れる予感がしました。

観光スポットから離れた静かな田園地帯。新崎川には川魚が泳ぎ、川の近くには畑、民家の軒下には大根が干されていました。川の音をかき消すように、ガタンゴトンと列車の音が聞こえてきました。ここには昔ながらの長閑な湯河原が残っています。

湯河原は吉浜海岸が波乗りのスポットですが、福浦に港があるおかげで昔から美味しい魚介類を食べることができました。海の匂いを感じながら、アジやカマスなど地魚を味わいました。

船が乗っかっているみたいな不思議なカタチの建物が湯河原町役場です。住民たちの行政サービスは主にこちらで。
昭和レトロな建物が多く残っているのも湯河原の特徴。古民家カフェを探してみるのも良いでしょう。

湯河原温泉では5月の終わりに「湯かけまつり」という珍しい祭りがあります。その時期から夏まつりの8月まで、温泉街にはピンク色の丸い提灯が飾られ、夏の温泉街を彩ります。

温泉街には数々の温泉櫓をみることができます。そこかしこで湯気が立ち上るのも温泉地ならではの光景です。

奥湯河原へ上っていくと徐々に人影が少なくなります。今ごろ温泉に入ったり、旅館のごちそうに舌鼓を打っているのかしらと想像します。秋には真っ赤な紅葉のトンネルができる奥湯河原。この場所を過ぎるとパークウェイで箱根や三島方面に抜けることができます。